高校生の子どもを持つ保護者の方と話をすると、「高校生のインターンシップがある」ということを初めて知るという方がとても多いことがわかります。そもそも、職場体験は小学校、中学校で行うもので、インターンシップは大学生が行うもの。高校生は大学や専門学校に進学のために勉強するものという認識が強いようです。しかし、文部科学省では、キャリア教育の一環として、小学校、中学校、高等学校での発達段階に応じた多様な体験活動の充実を図っています。
高校生のキャリア発達段階は「現実的探索・試行と社会的移行の準備の時期」にあって、そのキャリア発達課題は「自己理解の深化と自己受容」、「選択基準としての勤労観・職業観 の確立」、「将来設計の立案と社会的な移行の準備」、「進路の現実的吟味と試行的参加」にあるとされ、小学校、中学校で実施される「視野を広げる」「自己と社会を結びつける」職場体験とは意味合いが違い、社会人・職業人としての能力、態度を一層高めることや近い将来における社会参加を視野に入れながら職業に対する理解を一層深め、明確な進路希望としての職業の選択に役立てたり、自己理解の深化を図るものと位置づけられています。このように高校生の職場体験は、「知る」ことを目的とした職場体験ではなく、これからの人生に役立てる、活かしていくための「経験」とするため、職場体験とは言わず、インターンシップと言われています。
高校生のインターンシップは、学校など実施主体が設定する目的によってさまざまであり、職業理解や進路選択を目的にしたものから、工業科などの専門学科が行う実践的な技術を行うもの、社会課題解決や企業の課題解決の提案、まちづくりなどがありますが、必ず、学校教育では実現できない、職場での異年齢、特に年齢差の大きな大人との交流の場であり、参加する生徒自身の挑戦の場でもあります。
一方、多くの人が、「良い大学に入ることが良い就職につながり、安定した人生を送る」時代から急速な社会変化が繰り返され、従来の安定がもう安定とは言えない時代になっていることを知っています。時代に合わせて大学入試も大きく変わることが決まっています。当然、学校がすべてを教えてくれることもありませし、子どもの将来を保証してくれるものでもありません。もし、わが子が社会を知ることもなく、挑戦する機会を与えられないまま、社会人として働くことになるとしたらどうでしょうか?これからの社会を生き抜く力を身に付ける教育として、発達段階に合わせたインターンシップ等の体験活動を充実させるため、学校だけでなく地域社会が協力し、高校生の挑戦の場(機会)をどう創出していくかを社会全体で考えていく時期に入っていると思います。