学校法人桐蔭学園 理事長代理/桐蔭学園トランジションセンター 所長・教授の溝上慎一氏は、2017年1月23日に「(講話)高校生の半数の資質・能力は大学生になってもあまり変化しない -10年トランジション調査」の結果を論考として掲載。
本サイトが重要視する、18歳における主体的選択の重要性を裏付ける中身のため、改めて紹介する。
この調査は、2013年から行われており、高校2年生約4.5万人(全国約400校)を10年間を追跡調査し、どんな要素が、若者成長やキャリア形成に影響を与えるのか、について明らかにするもの。この報告時点では、高校2年生で調査した対象の若者が、大学1年になってどうなっているか、を分析した中間報告的な分析を紹介している。
その結果、高校2年生段階の学びへの態度は、大学になっても半数は変わらず、そのままの大学生まで継続しているということ。そのなかで、もっとも学び成長する高校生は、「授業外学習をおこなっていること」「豊かな対人関係を築いていること」「キャリア意識をもっていること」の3観点を併せてもっている、ということ。
そして、雑感として、以下のようにまとめている。(太字部分はこちらがつけました)
大学生の学びと成長のデータを大規模に収集してきた経験から、講演やシンポジウム、フォーラムの機会に、高校の先生方に、高校生に学習だけでなく、対人関係やコミュニケーション、キャリア意識を併せて育ててほしいと何度も説いてきた。そうでないと、大学生になって彼らは学ばないし成長しないからである。いくら勉強ができても、いくら良い大学に入っても、大学で学び成長する気がないならば、彼らは何のために大学へ進学するのだろう。良い大学へ入れば将来安泰という時代はもうとっくに終わっていることを知らないわけではあるまいし。そう説いてきたわけである。
大学がいくら頑張って教育改革を進めても、関わってこない学生を育てることは不可能である。とくに大半の総合大学では、担任もいない、学生の顔と名前もわからないなかで教育をせざるを得ない。この状況下で、対人関係の弱い学生は、選択の演習科目やプロジェクト型の授業を履修してこない。今でいうところのアクティブラーニングや実験においても、他の学生と積極的に作業をしない。キャリア意識の弱い学生は、クラブサークル、アルバイトといった目先の楽しさに溺れ、将来に向けて自分を一歩でも高める活動に従事しない。そして、なによりそうした学生たちが単に学習を積極的にしないだけにとどまらず、いま施策で叫ばれる資質・能力も十分身につけていないというデータが蓄積されてきている
出典:ウェブサイト「溝上慎一の教育論」
この調査は続いており、追跡調査の結果が待たれる。