1982年ー私の18歳
18歳の私には、“何か大きな決断をしなくてはいけない”という意識はありませんでした。
もともと大学へは進学するものだと思っていましたし、大学や学部選びについても“決断”というほどの覚悟や危機感はなかったですよ。
考えていたことは、
父親が東京の大学へ行ったんだから、自分も東京の大学へ行くぞ!
物理やものづくりが好きだから工学部に入ろうかな?
会社を継ぐんだから経済学部がいいかな?
という程度です。
これは大前提として、“将来は家業を継ぐもんだ”と思っていたからでしょう。
“家業を継ぐ”という意識が芽生えたのは、高校生の途中から。
中学生くらいまでは、有名人に自分の将来像を重ねたり、当時の総理大臣である田中角栄さんに憧れて、自分も政治家になるつもりでいたりしましたけどね。
じわりじわりと現実的な大人になり、“自分は父親がやっている会社を継ぐ運命だ”と納得し受け入れていた状態が、18歳の頃の私です。
私の18歳から現在
東京の大学を卒業した私に、父親は独断で新しい会社を創る段取りを整えていました。
実家に戻った時には、すでに家業と同じような業種で機械が導入されており、共同経営する方も決定されていて、あとは社名をつけるだけという状態。
私からしたら(さあ、父親の仕事を手伝おう)と思って戻ったら、居間に知らないおじさんが座っていて、「これからよろしくね」って言われる状況です。今でも笑い話にしていますよ。
昔の私たちの業界は、
学歴のある人たちに負けたくない
彼らに負けないように技術を身につけるぞ
という負けん気をモチベーションに仕事をしていた職人さんが多かったんです。
職人さんたちは、自分のやり方を貫くような頑固な方が多い。
父親としては、大学を卒業してすぐに職人さんたちに揉まれるよりも、小さな組織を運営しながら技術を学ばせてもらう方が私には向いていると思ったんでしょうね。
お膳立てがあって創ったその会社は、父の会社に統合するまで、25年近く経営しました。
学生時代は、父親と同じように東京の大学へ行き、父親と同じように山岳部に入るなど、父親の背中を追いかけていた私でしたが、経営に携わり始めてからは独自の考えを持つようになりました。
経営方針で父親と衝突したことは数え切れないほどありましたし、昔ながらの職人さんのやり方に反発を覚えることもしょっちゅう。
私自身のモチベーションは、そうした数え切れない憤りを自分なりのやり方で打破していくことでした。
例えば、「この世界では10年やらなければ使いものにならない」といった職人さんの口癖に対しては、違和感を覚え、即座に現代ならではのやり方を模索しました。
(技術が進歩して、社会全体の仕組みも変わってきているのだから、改善できないわけはない。絶対にできる)と信じ込むことが、その頃の原動力になっていましたね。
私は、18歳の時も、その後も、大きな選択をしたことはありません。
周りの人たちがくれるアドバイスをききながら、流れに逆らわずに進んできました。
それがいいことかどうかは人それぞれだと思いますが、私にとっては正解でした。
ただただ、目の前のこと、信じたことに精一杯取り組む。
精一杯取り組んでいたらある時違う世界が見えてくる。
そうしたらその世界でまた目の前のことに精一杯取り組む。
そこでまた新しい世界が見えてくる。
常にその繰り返しで歩んできて、今があります。
今私が、もし18歳だったら
今私が、もし18歳だったら。
前提条件として実家が事業をしていたら、今と同じように後を継ぐことを選んだと思います。
大学へは進学したでしょうし、もしかしたら、当時東京の大学へ進学したような感覚で海外の大学を選択したかもしれません。
それでも結局は帰ってきて家業を継ぎますね。
家業を継ぐということは、私にとって、本当に自然な流れなのです。
私から若者に伝えたいのは、未来のことについて深く考えすぎなくても大丈夫だということ。
現代はたくさんの情報に触れる機会があり、
“こうあるべき”という情報も多いので、翻弄されてしまうこともあるかもしれません。
しかし、未来のことばかりを気にしすぎなくても、
今、目の前のことに一生懸命取り組むことで、
いろいろな方が助けてくれて、さまざまなチャンスが巡ってくるものです。
ただそのチャンスに気づくことができるかどうかは、本人次第。
たくさんのチャンスに気づくためには、
目の前のことに一生懸命に取り組んで新しい世界を見るという過程が大切だと思います。
未来は未知数です。
自分にとって素晴らしい未来へ進むためにも、今ある流れに身を任せながら、目の前のことに精一杯取り組んでみてください。
水野一路ユーアイ精機株式会社 代表取締役社長
ユーアイ精機株式会社 - TOP愛知県尾張旭市の試作メーカー,製造業 【主要業務】自動車関連の試作プレス部品,小ロットプレス生産品,生産用金型等の機械加工製作 (例:プレス金型・プレス試作品製作,プラスチック金型,設計製造販売) 【対応業務】プレス量産金型,板金試作加工,樹脂量産加工,少ロットプレス,各種部品加工,治具加工,マグネシウム合金 【人材募...少数精鋭で自動車部品の試作品や量産用金型、金型部品の製作に取り組み続ける。加工技術の向上や新素材の研究にも力を入れており、近年は海外事業も積極的に展開している。
https://jgoodtech.jp/pub/ja/journal/benchmark/benchmark-009/同社は2019年に創業50周年を迎える。