いま私が、もし18歳だったらー 『教育学』を超える『学習学』の提唱者:本間正人(京都造形芸術大学教授・副学長)

(1984年3月 松下政経塾時代の24歳。神戸国際会議場でのシンポジウムで発表している際の写真。)

私の18歳の選択
~みんなが選ぶ道でなく、「その他」の道を選択し始めた時~

私は、東京教育大学付属駒場高等学校、通称、教駒(現在の筑波大学付属駒場高等学校)と呼ばれる高校に通っていました。

高校は、卒業したら線路の向こう側にある東大へ行くのが当たり前、という雰囲気。

さらに東大の中でも、理工系の理科一類、医学部の理科三類や、文系でも法学部がある文科一類を志望する人たちが圧倒的でした。

そんな中で、私は国際関係論や教育学、社会学に関する文科三類を志望していました。そんな人はほとんどいなかったです。

当時、将来のルートとして一番いいといわれていたのは「大蔵省」。ただ私自身は、官僚になって決まったレールの上を歩くのが絶対に嫌でした。

『そうした道のどこがエキサイティングなんだろう・・・』と。

当時、漠然とではあるものの、想像できた自分の将来像は、国連で働く姿です。

国連という組織に、『あそこでは毎日いろいろな難しい国際紛争の調停をしているんだろう』と憧れを抱いていたんですね。

だから、文一や、理一、理三ではなく、東大の中でも国際関係論が学べる文科三類を選んだのは自然でした。周りのみんなからは、「成績的には他のコースに行けるのに、なぜ文三?」と不思議がられました。

この頃からでしょうか。その後、多くの人が選ぶ道とは違う『その他』の道を歩むようになったのは。

高校生時代の私は、リーダーシップをとる役割を自然に担っていたと思います。なぜなら、人前にでることにリスクを感じない。「どう思われるか回路」が麻痺しているから(笑)。

高2のときに自治会の議長をやっていましたし、高3のときは、文化祭でも総務的なリーダーをしていました。

教駒では、高校3年生の11月、普通なら受験勉強に必死になるはずの時期に文化祭をやっていまして、僕自身はほぼ受かると踏んでいたこともあり、文化祭では『元締め』を務め、細かいことは全部引き受けて、他の人の負担を減らす「お膳立て」をする役割に徹していました。

文化祭は、お祭り広場、演劇と映画をやっていたのですが、「お祭り広場」では3日間で250万ぐらい売上を出して、その利益で演劇と映画の資金を助けてあげて、感謝されたりしていました。

当時私が思っていたリーダーシップとは、関わる個々人の労力は最小限にしながらも、全体としては最も高いパフォーマンスを出せるよう組織を動かしていくこと。

私自身、当時は『雑役型リーダー』なんて呼んでいました。

後年、「サーバントリーダーシップ」(※1)という言葉が出てきた時、自分が18歳の頃やっていたことだと思いましたよ。

私の18歳から現在
~あこがれた国際機関の道は行き止まりとわかり、方向転換~

大学時代は、難しい国際紛争の解決に携わりたいという思いがあったことから、国際学研究会(CUIS, College Union for International Studies)という、いろんな大学の学生が集まって国際学を学ぶサークルに所属し、ヨルダン、シリア、リビア、アラブ連盟など紛争をかかえるアラブの外交官ばかりを集めてイベントをしたりしていました。

そして大学卒業後は、「松下政経塾」という、また他の人が選ばないような『その他』の道へ進みました。

塾が立ち上がって3年目で、今ほどは知られておらず、また「なんだそれは?」と言われました(笑)。

国連機関に勤めようと思っていた私は、政経塾時代に、国際連合国際青年年事務局での仕事を経験しました。今でいうインターンシップのような形です。

高校時代から憧れていた国連という組織ですが、外から抱いていたイメージと、内部で働いてみて感じた印象は全く違いました。紛争を交渉で解決するような仕事というよりも、ペーパーワークばかり。文書をつみあげて調整する仕事。国連は「お役所」なんだ、ということがわかりました。

結果として、私にとってのインターンシップは、自分にとってこの道は行き止まりであるということをはっきりさせる機会になりました。

やっぱり、行ってみないとわからないものですね。

インターンシップを終えて日本に戻ってからは、内外政策研究会(大来佐武郎会長 元外相)のアシスタントとして実務研修を経験しました。

この経験を通して、国連以外にも国際的なポリシーメイキングに影響を与える場が、ローマクラブ、ブタペストクラブとか、たくさんあるということを実感できたことは非常によかったです。

地球社会の未来を建設的に提言する「ローマ・クラブ(※2)の21世紀版」を創ることをライフ・ワークとして志すきっかけにもなりました。

その後、アメリカのミネソタ大学での成人教育学の博士号を取得し、「教育学」を超える「学習学」を提唱し、現在へとつながっています。

国際関係を選んだ当時の選択は、結果的には現在やっていることに全部つながっています。 教育学の博士号を取得しましたし、大学で教鞭をとり先生もしています。国際関係のことも、それがメインにする予定だったんだけども、今は、仕事のプラスアルファとしてやっています。

今年2月のワールドシフトフォーラム(※3)など国際関係のプロジェクトにも携わってたり、副学長を務めている京都造形芸術大学のほうでも、国際担当になって、アジアの芸術大学との国際交流を担ったり・・・。

最近、運命的な話があります。大学で、2019年2月に東京上野の美術館で開催する展覧会のテーマが、『宇宙船地球号』。その『宇宙船地球号操縦マニュアル』は私のバイブルであり、著者のバックミンスター・フラーは、ミネソタ時代の恩師であるハーラン・クリーブランド教授と親交の深い人物でした。

そういう意味で、大学やその後の活動が今につながっているという感覚を間違いなく持っています。

今私が、もし18歳だったら

私が18歳の頃と、今との大きな違いはネットの存在です。世界から受け取ることができる情報の量と速さが格段に違う。

だから、僕が、今もしも18歳だったら、留学という道を選んでいた可能性が高いですね。特に、今は「ミネルバ大学」という道があります。

この大学は面白くて、フィレンツェ、ニューヨーク、台北・・・などと世界中を周り、その間、zoom(ネットテレビ会議)をつかってディスカッションするようなカリキュラムがある。基本は学生が議論するのが主体で、10%しか教授は話してならない、というルールもある。

スタンフォード、MIT、ハーバード・・・といった世界有数の大学から優秀な教授たちが、この大学の講師陣に集まっている。

世界で一番入るのが難しいと言われている大学です。

それにもかかわらず、日本ではあまり知られていません。

いつも、『その他』という道を歩んできた私としては、もしも今18歳だったなら、ミネルバ大学を第一志望にしていたかもしれません。

今は評価が確立していないけど、今後、評されることを見越して「先物買い」のような選択をしてきましたから。

今の18歳に伝えたいメッセージ
~質の高い未成功の体験を積み上げ、本当の成功へ~

18歳の皆さんに伝えられることがあるとしたら、次の2つでしょうか。

1つは、自分の前に提示された価値観に同調しすぎなくてもいいということ。

特に、親の基準、先生の基準など、先生も親も人間で、必ずしも正しいわけではないです。ドジなことをするかもしれません。貴重な意見を教えてくれる存在なんだという気持ちで、感謝して、参考にしても最終的には自分の頭で考えることが大事です。

もう1つは、今の時代、国内の日本語の情報だけで人生設計を考えるのはもったいない、ということ。

世界を見渡してみると、日本から海外の大学に行く学生が極めて少ないという現状があります。フランスの芸術系の大学の先生が言っていたのですが、フランスの日本の学生はわずか2500人しかいない。中国人は7万人ぐらい。人口は10倍ぐらいなのに、30倍ぐらいいる。韓国からの留学生も多い。日本人が内弁慶になっています。

世界を見渡せば、さきほどのミネルバ大学のような大学もありますし、UAEのアブダビでは、大学のMBAコースが無料です。

今の時代、英語の長文を読むことが面倒臭いのだったら、グーグル翻訳やみらい翻訳など、精度の高い翻訳ツールを活用すれば、だいたいの中身はわかります。

クオリティの高い情報がえられ、進路の可能性が格段に広がるということを考えると、国内の日本語の情報だけで人生設計してはだめよ、と本当に思うな。

情報環境は革命的に違う。

ぼくの印象では、安定志向で冒険しない18歳が多くなっているような気がする。

今の時代、挑戦してなんぼ。安定なんて存在しない。

地面の上の道を歩いていく登山というよりは、サーフィンのようなもので、刻一刻変わりつづける海面をバランスとりながら、どう前にすすんでいくか。安定はなく、自分で学び続け、自分でバランスを取り続ける以外に道はない、と僕は思う。なにもチャレンジをしないことが失敗。必要な時間を失い、敗北の道を歩むだけ。

挑戦してその結果、まだ成功と呼べない状況になっても「未成功」と呼ぼう。

失敗ではなく、前向きなチャレンジはすべて未成功。

大きな成功をつかみたいなら、質の高い「未成功」をつみあげていくことが成功への道なんじゃないかな。

本間正人

「教育学」を超える「学習学」の提唱者であり、「楽しくて、即、役に立つ」参加型研修の講師としてアクティブ・ラーニングを25年以上実践し、「研修講師塾」を主宰する。

京都造形芸術大学教授・副学長
NPO学習学協会代表理事 NPOハロードリーム実行委員会理事
一般社団法人大学イノベーション研究所代表理事
アカデミックコーチング学会会長
一般社団法人キャリア教育コーディネーターネットワーク協議会理事
一般財団法人しつもん財団理事

また、NHK教育テレビ「実践ビジネス英会話」「三か月トピック英会話:SNSで磨く英語アウトプット表現術」の講師などを歴任。TVニュース番組のアンカーとしても定評がある

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※1. サーバントリーダーシップは、ロバート・グリーンリーフが1970年に提唱した「リーダーである人は、まず相手に奉仕し、その後相手を導くものである」というリーダーシップ哲学。

NPO法人日本サーバント・リーダーシップ協会

※2.ローマクラブ:1969年4月世界的な公害問題,人口爆発,軍事的破壊力の脅威などの人類の危機の接近に対し,可能な解決策を追求するため,イタリアの A.ペッチェイを中心に世界各国の科学者,経済学者,経営者などにより設立された民間組織。

Club of Rome

※3. ワールドシフトフォーラムは、有識者、NGO、企業、科学者、アーティスト、市民などが集まり、様々な領域におけるシフトの”今”を発信するイベントとして、開催されている。

WorldShift
持続可能で平和な世界へのシフト(=WorldShift)を宣言・行動する人々がつながる、アイデアとアクションの共有・創発・発信のためのプラットフォームです。

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